多くの読書人に常に新しい作品を待たれている、作家・山田稔の待望の作品集です。親しかった詩人の葬儀に際しての思い出を、香典返しに託して語る表題作ほか、今は亡き恩師や友人たちへの思いが様々なエピソードと共に綴られた短い随筆が11篇おさめられています。懐かしい人々に対するその優しさと惜別のこころ、そして時折まじる独特のユーモアが素晴らしい味わいを醸し出して、この人にしか書けない世界がまたひとつ生み出されている名著。渋みだけではない新鮮な輝きが、読む者の心を静かに照らします。また、富士正晴記念館における講演が収録されているのも本書の貴重なよみどころのひとつ。著者自身が日頃目指しているという、エッセイと創作の垣根を超える「散文」の芸術をどうぞお楽しみ下さい。シックな装丁は京都在住の画家・林哲夫さん。ただいま著者サイン本となっております。