「編集グループSURE」の代表的なシリーズが、「セミナーシリーズ 鶴見俊輔と囲んで」と題されるこちらです。哲学者・鶴見俊輔氏を軸に据え、毎回ゲストを招いて学問談話を行う薄手のブックレットですが、その中身の濃さは見た目をはるかにしのぐもの。専門分野から雑談にまで、縦横無尽に話の枝葉はのび、愉快な横道にそれてゆくのは読んでいて実に楽しい。鶴見氏から繰り出される質問のユニークさ、同席した若い人々からの反応など、薄いながらも読者にとっては実り多いこのシリーズ。実際に編集部の事務所で車座になって自由に話したという、座談会の持つ本来の楽しさが発揮されているのも魅力です。第5回の本書のゲストは、文芸評論家の加藤典洋氏。独創的な視点な評論で楽しませてくれる加藤氏のしなやかな評論談が読んでいて楽しい。町田康、村上春樹、ドストエフスキー…創作は進歩するのか。雑談調のなかに光る加藤評論のきらめき。
著者:加藤典洋 / 出版社:編集グループSURE / 装幀:北沢街子 / 148mm x 210mm / 80P / 無線綴じ冊子