「編集グループSURE」の代表的なシリーズが、「セミナーシリーズ 鶴見俊輔と囲んで」と題されるこちらです。哲学者・鶴見俊輔氏を軸に据え、毎回ゲストを招いて学問談話を行う薄手のブックレットですが、その中身の濃さは見た目をはるかにしのぐもの。専門分野から雑談にまで、縦横無尽に話の枝葉はのび、愉快な横道にそれてゆくのは読んでいて実に楽しい。鶴見氏から繰り出される質問のユニークさ、同席した若い人々からの反応など、薄いながらも読者にとっては実り多いこのシリーズ。実際に編集部の事務所で車座になって自由に話したという、座談会の持つ本来の楽しさが発揮されているのも魅力です。第2回である本書のゲストは、社会学者の作田啓一氏を招いて語る「欲動」について。欲動って? 混迷する時代の中で人をつき動かしているという欲動というものを、社会、犯罪、倫理、他者…。様々なキーワードで読み解くスリリングな一冊。そして鶴見氏はじめ参加者がおのれの見聞や体験をまじえて論じる事によって、この難しい問題に一層の厚みが加わってゆき、読者もひきこまれてゆくでしょう。
著者:作田啓一 / 出版社:編集グループSURE / 装幀:北沢街子 / 148mm x 210mm / 80P / 無線綴じ冊子