小冊子『murren』編者・発行人の若菜晃子さんによる、旅の随筆集三部作がここに完結。異国の街角、記憶に残る景色を静謐かつ濃やかな筆致で紡いだ『旅の断片』。壮大な自然の風景や記憶、己との対話から生まれる思考の広がりを情感豊かに綴った『途上の旅』。これら前二作を経た今作でおもに描かれるのは、英国、タイ、ロシア、南アフリカなどへの旅の記憶と旅の周辺について。
旅の空、ロシア カムチャッカのおばさん、英国 湖水地方の秋、旅と書物、忘れじの味、タイの午後、人々の街角、旅のあとさき、南アフリカの籠…。旅の中でこぼれ落ちてしまう風景や心象、一瞬の出来事を見つめる眼差しは変わらず、今作も随筆の所々にさらりと挿し込まれた美しいモノクロームのスケッチが読み手の心に優しく響きます。
手に馴染む判型、洗練された軽やかな造本もまた、紙の本を手にする喜びを一層特別なものに。この機会にぜひ、既刊とともにゆっくりとお楽しみください。特典には著者によるメッセージ・イラストポストカード・手描きメッセージポストカードが付属します。
(岡本)