小冊子『murren』編者・発行人の若菜晃子による、『街と山のあいだ』『旅の断片』に続く第三作目となる随筆集。 今作の舞台となる旅先はカナダやネパール、チリ、モロッコなど多種多様。旅の朝、インドで拾った石、ネパールのバス停にいる似顔絵師、素焼きのカップ、それぞれの土地で目にした悠々と広がる林や自然の光景…。どこか有名な観光地に足を運ぶわけでなく、ただただ、土を踏み締め歩いた国での旅の記憶や、知らない土地で湧き出た感情や思考たちが丁寧かつ静謐な文章で綴られています。ページのところどころに散りばめられた旅のスケッチも美しい。
「人間は常に自然のただなかにいる。
そしてそのことをいつも忘れてしまう。
私はそれを全身で感じるために、旅に出ているのかもしれない。」