パンやお菓子、民芸品など、その土地ならではの味や文化を独自の視点で見出し紹介する甲斐みのりさんがこの本で選んだテーマは「アイス」。登場するのは、スーパーやコンビニで手に入る大手メーカーのものとは一線を画する地方や小規模店が作り続けるアイスたち。青森のカランカランアイス、桑名のアイスまんじゅう、鹿児島の白熊アイスなど、こんなに多彩なアイスたちが全国各地に息づいていることに改めて驚きを感じます。地元で愛される味、ここでしか会えないパッケージ。それらを、自身の体験や豊富な知識に基づいたエッセイを交えつつ紹介するスタイルはおなじみながら、対象がアイスとなればその幸福感はなおいっそう。庶民の歴史と文化への敬意や愛情、確かな選択眼、そしてそれらを読者に提示する編集力が素晴らしい。人の心を癒す不思議な食べもの「アイス」。このアイスになんども助けられ、アイスに恩返しがしたいと言う甲斐みのりさん。その心が見事に実った充実の内容です。どこか懐かしく、詩情と郷愁にも似た思いをのせて。美しい写真と豊富な情報とともに、全国のアイスめぐりの旅をこの一冊でお楽しみください。
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