文筆家・甲斐みのりさんがこれまで様々な媒体で綴ってきたエッセイ。その中でも食に関する文章のみを抜き出してつくられた食エッセイ集がこちら。「おやつの記憶」「旅のかけら」「甘い架け橋」など、章ごとにわけられたそれらの文章には、食をめぐる様々な思い出が優しく綴られています。父と食べた揚げまんじゅう、日曜日のパンケーキ、東京、京都、静岡で出会った味。家族や友人と、時に一人で。非常に個人的な事柄を語りながら、読者にも自身の深い記憶を呼び覚まさせる。すぐれた食エッセイにはみなそういう作用がありますが、この本にもそんな「文の力」があちこちに散りばめられています。喜びも哀しみも食とともにある。日常の中に宿る様々な食の風景をお楽しみください。湯浅景子さんによる装丁も穏やかで美しく、美味しそう。
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