あの名著『京都の中華』が文庫になって帰って来ました。惜しまれつつ2009年に姿を消した既に伝説の名店「鳳舞」を始め、「盛京亭」や「ハマムラ」、下鴨「蕪庵」に祇園「竹香」など、京都の街の底を流れる一連の「京都の中華」という存在、空気、文化そのものを独自のペンで形にした本書。いわゆる「京風中華」よりもやはり「京都の中華」と呼びたくなるそれらの名店とそれぞれの味を丹念にたどった取材と文章は愛情と尊敬にあふれ、美しい写真とデザインと共に読者を豊かな旅にいざないます。「言葉にならないものを言葉にした」と解説の誠光社店主・堀部氏の文にもあるように、明確なジャンルわけがあるわけでもない、しかし確かに存在する「京都の中華」というものの魅力をこれほど描き出した本は他にはありません。「鳳舞」の創始者についてのルポや京都における中華料理についての考察など都市学的にも読み応えは満点ですが、そんなことよりも、やはりひとつの料理を軸にひとつの街の物語を浮かび上がらせた、本書はその面白さに尽きるのではないでしょうか。京都に住む者としてもある種のノスタルジーと、どこか不思議と安心できる気安さを感じずにはいられない、そんな我々の愛すべき「京都の中華」です。
商品情報 |
著者 | 姜 尚美 |
発行 | 幻冬舎(幻冬舎文庫) |
サイズ | 110mm x 150mm |
ページ数 | 285P |
その他 | ソフトカバー |