神ということばを聞かぬこの冬のかすかに革の匂う手袋
ティ・カップに内接円をなすレモン占星術をかつて信ぜず
毒のないぼくの短歌とよくなじむ信仰心のうすいマシュマロ
1919年静岡県生まれ。終戦後より1984年まで東京天文台(現・国立天文台)に勤務し、数々の歌を紡ぎ出してきた歌人・杉崎恒夫による第一歌集が、刊行より24年の時を経て新装版として帰ってきました。
音が明確に聴こえてくるわけではないが、ふだんの生活の中で、食卓の上で、僅かな断片を目にしたときに聴こえる、身の回りの風景が含むメロディ。短歌を詠む純粋なよろこび、透きとおることばによって織り成される韻律とハーモニー。目の前に情景がありありと浮かぶようなみずみずしい228首を収録。その自由でリズミカルな、詩とも思える歌の数々をぜひおたのしみください。(韓)