春眠より覚めるわたしはチョコレートのカシュウナッツのように曲がって
美しい紅茶には神さまが住んでいるある朝ふいに信じたくなる
こわれやすい鳩サブレーには微量なる添加物として鳩のたましい
歌人・杉崎恒夫による、『食卓の音楽』に続く第二歌集。
幸福なひとシーンを汲み上げた祈りのようでもあり、しずかな感傷をうつし出した水面のようでもある。気を張らずにいると忘れてしまいそうな日常の一片。微かに光を放ち、凛とした空気をも纏うことばたちはどこか儚く、うつくしく、あぶなっかしい。日々の機微を見つめるたしかな眼差しが伝わる一冊です。(韓)