キャベツを千切りにする。大根を面取りする。お玉で味見をする。
その間だけはわたしのからだのまわりに薄い虹色の膜のようなものが出来て、
それがわたしを守ってくれるような、そんな心地がする。(中略)
文章を書くことも菜箸を持つことも、
わたしがわたしを取り戻すために必要な行為なのだと、改めてそう思う。
(「あとがき」より)
うれしいときも、やるせなくてかなしいことがあっても、何かを食べて生きていくし、そうするしかほかない。食の記憶は、いつだって生活の近くにある。
歌人・くどうれいんさんによる待望の食エッセイ本。祖母のひとりでご飯を食べに行けない話、「頑張ろ」を「頬張ろ」と見間違えた話、うっかり手を切ってしまった話、愛をやわらかい棒状にした生春巻きの話、桃を煮る話、大好きなとろろの話…。はつらつと台所に立ち食材を刻む日も、家事に手が回らず悔しい気持ちを抱える日もあっていい。あらゆる暮らしの側面をまるごと包み込んでくれる等身大のエッセイ本。まるで桃の肌を思わせるような、やわらかな手触りのカバーにも注目です。(韓)
商品情報 |
著者 | くどうれいん |
発行 | ミシマ社 |
サイズ | 四六判並製変形 |
その他 | 136P / ソフトカバー |