土地とのつながり、ものとのつながり、人とのつながり。それらによって形づくられた日々の営みの流路を丁寧に辿り、美しく切り取られた写真とレイアウトで紹介する本誌。復刊第10号の特集は「扉を開けたいお店。」。
お店に行くのはものを買うためのことではなかった。
どんなものと暮らそうか。
どんなふうに生きていこうか。
そのとき出会ったものに気付かされた。
かつて郵便局だった築120年ほどの建物を残すため「注文の多い料理店」をイメージしてその場所を引き継いだ、鹿児島県・枕崎市「山猫瓶詰研究所」。街の人、街を訪れる人とのコミュニケーションを楽しみながら「いわゆる何屋にはなりたくない。」とものの種類に縛られず自らが惹かれたものを紹介する、鹿児島県・鹿児島市「OWL」。昔ながらの個人商店が軒を連ね、馴染みの人々のやり取りがそこかしこからきこえてくるような「柳町商店街」に惹かれ、その一角で「日用品として長く使えるもの」を扱う福岡県・門司「ツクリテ」。そして当店でもおなじみ、京都市・中京区にて、自分にとっての良い道具を見つけてほしいとの思いから実際に商品を使って試すことができるキッチン用品のお店「Lader」さんなどなど。
毎号作り手をとりあげる「ものづくりものがたり」では、京都・左京区にて古民家をセルフリノベーションした工房を構える金工作家・中根嶺さんの紹介も。
なんとなく足が向いてしまうお店、一度行ったきりだけれどずっと記憶に残っているお店。思い返してみると、自分が好きな理由に共通するものがあったりして。ちょっと大袈裟な言い方ですが、いいなと思うお店の扉を開くことは、自分の心の扉を開く行為なのかも知れません。(藤林)