戦後活躍した「荒地」の詩人、黒田三郎。1960年、昭森社より刊行された入手困難な個人詩集『小さなユリと』がこのたび完全復刻されました。妻の結核療養中、幼い愛娘のユリとふたりきりで過ごした日々。馴れない家事、幼稚園への送り迎え、そして独り遅れて出社する勤め人の哀しみ。娘を寝かしつけた後に酒場へ走りながら、泣き止まない幼子の呼び声がどこまでもついて回る。生活からため息のように漏れるやりきれない情けなさを、日常の言葉で率直に表わした詩人のひとりごと。初版の趣きを損なうことなく、一冊の詩集に込められた作り手の情熱まで再現した味わい深い仕上がりです。萩原魚雷氏による投げ込み冊子の解説つきでお届けします。
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