「元旦。起きて外見る。人の姿車の影なし。また眠る。」で始まる、武田百合子遺作であるこの『日日雑記』。この本からにじみ出る不思議な魅力…ユーモアであったり、暖かさであったり、やるせなさであったり、あるいは著者自身の可愛らしさであったりするそれらをうまく説明する事は難しい。文字通り一日の行動を淡々とした筆致で描いた日々の記録が続くだけなのに、しかし著者の持つその「ただ者でなさ」は、これまで数多くの読者を惹きつけそして今もなお離れがたくさせています。Hこと娘の花さんと2人で過ごす明け暮れが、ぼそぼそとつぶやくような響きとなってページを繰る者の耳に入る心地よさ。誰にでも、平凡でかけがえのない日日があるのだと気づかせてくれる本書は、当店で扱う随筆集の中でも、最も絶え間なく読まれているもののひとつです。この中に登場する様々な追想や過ぎ去った人々への思いは、そのまま、いま私たち読者が武田百合子に向けて抱く思いと重なるような気もします。
商品情報 |
著者 | 武田百合子 |
出版社 | 中公文庫 |
サイズ | 105mm x 105mm |
その他 | 267P / ソフトカバー |