家、室内、それら生活の場が包含する記憶と夢と経験。本書では、愛する人を亡くしたオランダのアーティスト、ペトラ・ノートカンプが日本を旅した際にそれらの概念を実践することとなる記録が写真でおさめられています。石、木、苔、空気、そして日本独自の木造建築にみる建具や柱、射す光。それらに宿るものに想い人の遺品を重ねて築かれる深く豊かなイマジネーション。ウッディ・アレンやクロード・ルルーシュなどの映画の場面を引用したテキストを随所に挟むことで、心理と空間の関係をより際立たせてもいます。建築や物、空間やインテリアが作用する心象風景。動きを止めることで得られるインスピレーション。「生活空間は夢と無意識の構造に似ている」とし、物理的な空間や時間からは切り離されているという理念のもと、遠い日本での暮らしの場での体験を個人的に探求した優美で特異な写真集です。コデックス装にエレガントなカバーをつけた装丁も美しい。テキストは英語。