2023年6月27日から9月24日まで、豊田市美術館で開催された「吹けば風」展の図録。本展示会のタイトルの由来は、詩人・高橋元吉が詠んだ「咲いたら花だった 吹いたら風だった」という一節より。
情報を極端に絞り、略歴を省いて作家名のみを掲示。作品を説明するキャプションも一切添えられていないという、鑑賞する側にイメージを一任する展示形式をとっていた本展示は、手法の異なる4名の作家が「通常は見過ごされ、忘れ去られてしまうようなささやかな経験」「ほんの僅かな間だけ意識にとどまる小さな発見」を見つめ直し、汲み上げたこまやかな息づかいを含んだ断片たちで構成されています。ページをめくりだすと庭園からはじまり、展示室1から5、さらにはアトリウムや屋外までを作品らと丁寧に辿りゆく。まるでひとつの、手のひらにおさまる大きさの建物に立ち入るような感覚。4名の作家のインタビューと共に、豊田市美術館学芸員・石田大祐、美学研究者・森功次、詩人・大崎清夏、視覚文化研究者・佐藤守弘による論考も収載。ふだん日常や出先などで感じる、あまりにささやかで朧げな輪郭を移す心の機微にフォーカスをあてた精密でうつくしい一冊。日米バイリンガル表記。(韓)