熊本にゆかりのある書き手たちの文章を束ね、「職人の自主的な共同組織」を意味する”アルテリ”をタイトルに冠した文芸誌の十五号。今号では、刊行前に逝去した渡辺京二氏を悼む主宰の田尻久子さんの文章から始まります。「それでも言葉によって生きたい。それによってしか真に生きられないという人びとが存在する以上、森の深みに通じる小径はおのずと光を放たずにはおかぬだろう」この言葉と共に、「アルテリ」創刊の後押しをした渡辺氏の志と共にこれからも歩む決意の号。ほか、伊藤比呂美、坂口恭平、石牟礼道子、梯久美子、吉本由美ら10名の書き手がそれぞれの風景を紡ぎます。巻末の編集後記にも渡辺さんへの思いが込められ、「言葉の力を信じている」という希望に満ちた号ともなっています。静かな表紙絵には坂口恭平さん。