もし『不思議の国のアリス』を日本の文豪が翻訳したら?
初版は1972年。日本を代表する文筆家である芥川 龍之介、「文藝春秋」創業者である文壇の大御所、菊池 寛による共訳として『アリス物語』は誕生いたしました。
「ガラス瓶」は「甕」に、「ティーカップ」は「茶呑茶碗」、さて「タルト」は?当時の子供達に伝わるよう工夫された表現、夢の詰まった物語世界は今なお格式高い訳として、また一層ユーモアに溢れたお話としてお楽しみいただけることでしょう。空想世界を支えるカラーで掲載されたマーガレット・タラントの挿絵も必見です。
さて、本書が完全版として復刊した経緯、文脈についても気になるところ。芥川龍之介がこの世を去ったのが1972年7月。初版は同年11月。さて、「共訳」の経緯は?解説は小説家であり、芥川龍之介の研究者でもある澤西祐典さん。読み進めるたびに胸が締め付けられそうになる切ない背景は物語世界を楽しんだあとに。
「踊の仲間に入らないかい?入るか、入らぬか、入るか、入らぬか。」
幻の名訳をお楽しみくださいませ。(原口)