「心身を解放するお茶。命ある喜びを奥底から湧き上がらせるお茶。厳然と、私は他の誰でもない私を生きているのだと思わせるお茶。元来お茶には、その力がある」(冒頭文より)
岩手県雫石町で、自身の手で焙煎した茶葉を提供する実店舗のないお茶屋さん「焙煎工房しゃおしゃん」を運営する前田千香子さん。中国に渡り実地でお茶を学んだ経験を活かし、心と体を思う茶葉をつくり、お茶を淹れ続けています。実店舗がないからこそ、さまざまな形で人と交わり土地に根ざすことができる。そのお茶への柔らかな哲学と優しい眼差し、凛とした姿勢が伝わってくるエッセイ集。お茶というものがいかに我々の生活に深く関わり様々なものを形づくってきたか、あらためてそのことに思いを馳せると共に、一服のお茶がもたらす潤しと恩寵と力を感じられる一冊です。新たな気持ちでお茶に向かい合えたら。