ジュリアン・グラックの幻の散文詩集『異国の女に捧ぐ散文』の特製版として、2022年の夏にエディション・イレーヌから刊行された《山下陽子オリジナル版画 I・30部特製版》。特製版はIとIIの2種類があり、第一作目の本作は、V章挿画のオリジナル版画一葉と、V章訳文を印字した特製紙一葉をタトウ紙ケースと筒帯で収納。版画は、挿画のイメージにあわせてドイツ製Zerkall紙が用いられています。グラックの詩的世界と絶妙なハーモニーを奏でる美しい愛蔵版詩画集をぜひ手元でご堪能ください。翻訳・松本完治 / デザイン・佐野裕哉　（エディション・ナンバーにつきましては、当店お任せでご了承ください。山下陽子・サイン入りポストカード【移ろいゆく影】の特典付き）

時として、濡れた春が、瑞々しい雨の花束（ブーケ）のように、彼女を僕のところへ投げ入れた、すると僕の口は、草原のような彼女の髪を長々と直かに噛みしめてから、彼女の口と瞳を僕の方へ引き寄せ、無垢で柔らかなキャベツの芯のように、その水滴を真珠の玉にしてしまう秘蔵の花の優しい心を、僕の方へ引き寄せるのだった。…　（『異国の女に捧ぐ散文』V章より）

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