私は意識の周辺から吹きあげてくる風に身をまかせ、
この見慣れた街の中へと歩みをすすめる。
そして往来のきわで写真を撮る。
-『見慣れた街の中で』序文より
牛腸茂雄が生前に刊行した4冊の作品集『日々』・『SELF AND OTHERS』・『扉をあけると』・『見慣れた街の中で』
上記に所収の全点に加え、生前に発表、もしくはまとめられた 2 つの連作〈水の記憶〉〈幼年の「時間 」〉の、これまた全点を収録した決定版が赤々舎より刊行されました。
そしてこれら作品は、各制作年代に沿って収載し、当時の書籍に掲載されていたテキストも数多く再録された、その美学と制作意図を知る上でまたとない作品集となっております。
モノクロームで捉えた都市の日常、自身も被写体のひとりとなり考察される「自己と他者」。さらに、紙にインクを垂らす手法のインクブロット作品、カラー・ポジフィルムによる写真群など、残された作品より牛腸氏が見つめた風景、その心象と歴史を辿ります。
また、遺されたヴィンテージプリントやフィルム原板での印刷に拘った印刷は、シリーズによって用紙を切り替えられた造本になっており、時の流れや牛腸のまなざしを追うようなつくり。
巻末には写真史研究者である冨山由紀子さんによる論考「『きわ』を生きる― 牛腸茂雄の作品と時代 」と共に、年譜・作品リストを収載した牛腸茂雄を語る完璧な作品集。
※「資料編」は2023年11月刊行予定とのこと -赤々舎HPより
(原口)