風呂の水が凍らなくなり猫が啼き東京行きの切符を買った
ばあちゃんの骨のつまみ方燃やし方 YouTuberに教えてもらう
できるだけ不幸になりたい人といて中華料理屋の名前は「ひかり」
今日まで生きてて良かったんだよね 鳥貴の釜めしまた食べようね
2017年から短歌を書きはじめ、エッセイなど様々な文体で活動を行う上坂あゆ美さん初となる歌集。
学生時代に数学の授業を受けていた頃のこと、夏の記憶、父のこと、家族のこと、地元のこと。どんなに絶望しても、生きるうえで感じるささやかな違和感、やり場の感情と呆れ、その中に見える祈りや救いに似た景色と美しいとも思える可笑しさ。いずれも包み隠さず、あるがままなされるがまま綴られた歌は僅かな疾走感さえ感じられます。巻末には歌人・東直子さんによる解説と著者・上坂さんによるあとがきを収録。
背後に控える諦念や淋しさ、不確実な重みと鷹揚さとを抱え、自分自身のからだと心を守りながら生きる全ての人におくりたい一冊です。(韓)