「わたしは あなた / あなたは わたし / 散りゆく 花びら / ふたりは ひとり」
西尾勝彦さんが編んだ新たな詩集。花びら、疏水、春の帽子、裏返しのシャツ、珈琲豆…。ふたり、時にはひとり、あるいはそのどちらもいないかもしれない景色を静かに淡く描きながら、確かな生の営みをうたうかのような優しい力を感じさせる言葉が連なります。ゆっくりと考えながら、語りながら歩む。この詩人ならではの朗らかで凛とした情景。ところどころに垣間見えるかすかなユーモアも西尾さんらしく、肩肘はらずゆったりと、そしてしっかりと紐解いて欲しい一冊です。本作はイスラエル発祥の靴づくりを続ける「NAOT」のウェブサイトに連載されたものをまとめたものとなり、ゆるやかな時が満ちる奈良の空気をふわりと含んだたたずまいも大いなる魅力。小川万莉子さんによる流れる水のような装画も清々しい美しい。