2015年にこの世を去った漫画家兼イラストレーター・フジモトマサルの仕事をまとめた一冊が平凡社コロナ・ブックスから刊行されました。動物を戯人化したユーモラスかつ皮肉の効いた作風、洒脱な構成。漫画作品、イラストレーション、装丁、挿絵、文筆。どれをとっても独特の目線とセンスであふれ、読者のみならず多くの作家や同業者にも愛され敬意を表されてきたその仕事の数々。村上春樹や穂村弘、長島有らとともにそれらを振り返ることで、あらためてその唯一無二の魅力が浮かび上がって来ます。シニカルで、洒落ていて、あたたかい。回文が得意でなぞなぞを考えるのが好きで夢と現実を反転させて楽しむようなシュールさ。常に読者を微笑ませ、ほんの少し裏をかく。様々な顔を持つフジモト氏の魅力をゆっくり味わえる好著であり、その著作の多くが絶版となっている今、貴重な一冊でもあります。2012年に行われた豊崎由美による貴重なロングインタビューも再録された決定版。