使い古しの消しゴム、幼い頃から大切にしてきた書物や原稿用紙、鉛筆などを用いてインスタレーション作品を発表する美術家、福田尚代の2001年から2013年にかけての制作を顧みる作品集。本書は、2013年に小出由紀子事務所で開催された個展の出展作品と、福田尚代のテキストを中心に編集されたもの。真っ白な表紙カバーに透明箔で刻まれた副書名「慈雨百合粒子 じうゆりりゅうし」は、福田尚代の回文作品より。
日常にあって、慣れ親しんだ品々が、福田の指によって、削られ、切り抜かれ、孔をあけられ、ほぐされると、もとの意味や機能が失われ、消えて無くなるかに思われるぎりぎりの瞬間に別の何かに生まれ変わる。そしてまた生まれ変わる。福田尚代の作品には、消滅の宿命と再生の約束という、共存しにくいふたつが互いを包含しあって共存していて、私たちを魅了する。 ー 小出由紀子(編集後記より)