2012年11月から一年間、台湾に住み暮らした著者による極私的台湾紀行『馬馬虎虎(マーマーフーフー)』。「いい加減な」「まぁまぁ」(著者に言わせると「ボチボチでんな」)という意味のタイトルを持つ本書は、いわゆる情報網羅的なガイドブックではなく、滞在生活から窺い知った街の様子や人々との出会いなど、肌身で感じた「台湾」を滞在時の写真などの記録を絡めながら綴った一冊。語学留学者としての生活、ディープな華西街夜市のこと、リゾート地である墾丁への旅、通っていたマクドナルドに集う珍妙な住人たち、台湾人を母に持つ立場から考えること…。旅行やショートステイではなく、一年という時間をかけて過ごした滞在者の視点で思いつくままに綴られた軽快かつ実直なテキストからは、私たちの未だ知らない台湾の魅力と奥行きが浮かび上がってきます。表面的な親しみを超え、未知の場所や文化と関りを持つことの楽しみと豊かさが伝わる一冊。(涌上)