人類学者を中心メンバーとするリサーチ・グループ「ホモ・サピエンスの道具研究会」による美術展のカタログとして2013年に制作された一冊の本が、新装版として届きました。
呼吸すること、ペンで何かを書くこと、頬にあたる風に季節を感じること、ぴったりの靴を選ぶこと、カバンの中身に計画と準備を見ること、残るということについての研究、景観を維持する私たちと世界の間で起こっていること・・・。あらゆる人が暮らしのなかであたりまえに行為している営みを研究対象に、ありふれていてあまりに当然のことゆえに普段は気づかない世界の設定や、意味にこだわりすぎて時に取りこぼされてゆくその豊かさについて考察した一書です。わかっていたつもりの行為や景色への解像度を上げたり視点をズラすことで、生き生きと容貌を違える世界の味わい。学術的で専門的になりかねないテーマを、シンプルな行為やルーティンの延長のなかに捉え、提示する、あざやかで心地よい気づきと学びの本。(涌上)