盆栽の松ちゃんが、東海道500kmを旅する不思議な不思議な写真絵本。宿場で出会う人々に盆栽を手渡し記念撮影をし、京都までひたすらてくてく。モノクロで撮られた人物や風景の中で、松ちゃんだけが色鮮やかなまま。その奇妙な冒険に、この号の発表時には大人も子どもも驚いたことでしょう。フォトグラファー・沼田元氣の80年代の仕事であり、児童向けながらエポック的・画期的な作品。生きるということは、自分の好きなこととどれだけなかよくできるかということ、という末尾の言葉に不思議と勇気づけられる傑作です。巻末には杉浦茂描く「歩く松ちゃんの立体工作」が作れる綴じ込みふろくつき。経年によるくすみ・シミなどは若干見られますが、特に大きく目立つ難はなく、概ね古書として標準的な状態です。