困り顔のゆうびんやさんが手紙を持って訪ねに行くのは、大きな大きな謎の洋館。
重たい扉、女の人と男の人の肖像画、絨毯の模様…。
きしししし。ひしししし。
手紙を楽しみに待っている、"みんな"の声がきこえます。
めくり終わったページの隙間で、彼らがこっそり動いているような気配さえ感じる、幻想的で奇妙な世界。
おそろしくもどこか親しいような感覚は、いつか昔、ものの影や暗がりの中に何かが潜むのを見つけた記憶のせいでしょうか。お話をたどりながら想像がむくむくとふくらむのは、暗くて広いお屋敷の中を進むことに似ているのかもしれません。そこには何かがいて、そして何かを待っています。
画家・網代幸介さんが描く、てんやわんやな配達奇譚。絵本の扉をひらいたら、ゆうびんやさんと一緒に手紙を届けに参りましょう。