東京・恵比寿で2015年に惜しまれつつ閉店した後、海外へ渡り、2018年より京都・大徳寺そばに再オープンした人気菓子店「歩粉」の磯谷仁美さんによるレシピ本です。

これまでに、アメリカのオーガニックレストランの先駆け「シェパニーズ」やポートランドのベーカリー、スウェーデンの「ローゼンダール・ガーデン」にて研鑽を積んだ彼女。現地で過ごす日々の中、さまざまな人や場所との出会いから得た学びや気づきが、レシピの端々に活かされています。生産者の方の思いを大切にすること。丹精込めて育てられた旬の食材を使い、食べる人への愛情を込めて作ること。そうして素材の持つ力を存分に引き出されたお菓子は、穀物の力強い風味と素朴な優しい甘さ、野菜や果物のフレッシュな味わいに満ちています。

本書では、定番のスコーンやケーキ、ジャムのほか、通販のお菓子セットで人気のものから、ごまや味噌、豆腐やごぼう、里芋など、日本人にもなじみ深い食材を使ったものやグルテンフリーのものまで、全40品を紹介。自分に、あるいは大切な誰かに、時にめまぐるしく過ぎゆく日々の中にあってこそ作ってほしいものばかり。どれも軽やかでありながら、ひと口ごとにゆっくりと噛み締めたくなる味わい深さです。ほっとするおいしさを、ぜひご自宅でも。Kit店主・椹木知佳子さんによる、歩粉のお菓子を彩るテーブル周りの景色も見どころです。（岡本）