売れない絵描きを訪れた不思議な猫が見せる魔法のはなし。小さな鍋「ゆきひら」に元気をもらうおばあさんのはなし。ある日森の奥でたった一人ジャム屋を始めた男のはなし…。童話作家・安房直子のよりすぐりの物語が12篇おさめられた小さな作品集。穏やかな童心、清らかで甘く切ない詩情。どれを読んでも、独特のファンタジーと、随所に見られるその繊細な描写に心動かされます。優しいだけでない、どこか遠い世界へ連れて行ってくれるような、幼な心へ戻っていくような不思議な気持ち。小さな頃に読んだ物語は、心の底に残り、時を経てから気づかなかった人生の機微や新しい景色を見せてくれる。この本はそういう一冊にきっとなる、そんな気がします。