生誕100年、そして没後20年という節目の年に、詩人・茨木のり子の「全日記」が刊行されました。
第一巻となる本書には、医師・三浦安信氏と結婚した1949年から1952年、1955年から1962年にわたる日記を収録。23歳から36歳までの歳月が記されています。
綴られているのは、訪れた場所や読んだ本、演劇や映画の感想、同時代の詩人たちとの交流、出会った人々、晩ごはんのおかず、仕事や日々のこと。ページをめくるごとに立ち現れてくるのは、「詩人・茨木のり子」である以前に、ひとりの人間として日々を生きる姿です。
日記は時に簡潔な記録であり、時に物語のようでもあり。喜びや落胆、ささやかな発見や可笑しみ、そのひとつひとつが率直な言葉で綴られ、いつしか遠い時代をともに歩いているような心持ちに。『自分の感受性くらい』『倚りかからず』『歳月』などの詩集で知られる茨木のり子。その作品から受ける印象とはまた異なる等身大の姿を身近に感じることができます。
豊富な写真や縁ある人々との相関図、巻末には充実した人名総索引なども収録。一人の詩人の人生を辿る資料であると同時に、戦後を生きたひとりの女性の生活史としても読み応えのある一冊です。
布クロス装に函入りという造本も美しく、長く手元に置きたくなる佇まい。日記を読む喜びと、本を所有する喜び、その両方をあらためて感じさせてくれます。
第二巻・第三巻は2027年に順次刊行予定。発行は『石垣りんの日記』でも知られる東京の小さな版元、katsura booksより。(岡本)
著者:茨木のり子
発行:katsura books
サイズ:A5変形判
その他:472p / 上製本 / 布クロス装・函入り・本文二段組