視差を抱えて遠くを見る
私たちの世界に偏在する、誰も言葉にできない危機感や不気味さ。この社会がなかったことにして触れずにいるなにか。はっきりと見えてはいないが「なにかある」という感覚。
-序文より
タイトルになっている「Parallax(視差)」とは、ある対象を異なる複数の位置から観測したときに生まれる”見え方のズレ”を指す言葉。
その言葉の通り、本書では建築や都市、人文学、アートなど、立場の違う視点をそれぞれの言葉で交わし、一つの思考の空間が立ち上がることを大事にした一冊です。制作を手がけたのは、京都大学で建築・都市・文化人類学を学ぶ博士課程の大学院生3人。
創刊号では4人のゲストと共に、編集部の三人に加え、ときに哲学・環境人文学を専門とする篠原雅武さんも交えながら、都市の公共空間の変容や、近代化がもたらす生活や環境の変化について思索を深められております。東北の鉱山跡地について”放擲”というキーワードを提示するのは富樫遼太さん。環境哲学を参照しながら、土地が内包する歴史、自然、人間のが語られ、また、郊外に見られる建造物をモチーフに、人のいない街がはらむ寂しさや異質さをオブジェクトとして捉える作品を制作している佐藤真優さんや、映画『PERFECT DAYS』のロケ地にもなった墨田区京島の銭湯「電気湯」四代目当主の大久保勝仁さん、陶芸家の坂本森海さんなどが登場し、専門的立場から見えるさまざまな事象、まつわる試みが収録されています。
各ゲストとの対話を丁寧に収録しならがも、注訳や後日談などの補足、フルカラーの 図版、日英バイリンガル仕様による両面開きになった造本含め、非常に読み応えのある内容です。視差を均さずに物事の来歴を考え、言葉にしながら実践を思索する、気合いの入った一冊です。(原口)
著者:佐古田晃朗・森口武・成原隆訓
デザイン:Rimishuna
発行:Parallax
サイズ:120mm × 162mm
その他:304p / ソフトカバー / 日英バイリンガル仕様/ フルカラー