我々と同じ一乗寺の町にある一軒の活版印刷所。本書では、この「りてん堂」村田良平さんの活版への想いと実際的な技術、そして工房のこれまでの歩みがゆったりとえがかれています。「植字」や「文選箱」など活版印刷にまつわる道具や用語がひとつひとつ丁寧に紹介される項と、本好きのグラフィックデザイナーだった村田さんがどうして活版印刷の道に進んだかの項がタペストリーのように交互に綴られる構成からは、文字や紙、書物や文学、そしてグラフィックデザインへの愛と敬意が静かに感じられます。活版印刷の仕組みをじっくりと教えてくれると共に、ひとつの場としての小さな印刷工房の魅力も伝わる本書。同時に、人と人のつながりや道具との出会い、それらの持つ縁とタイミングの不思議さ、そんな物語としての面白さも備わっています。やわらかな語り口に添えられるマツダナオキさんの穏やかな写真も実に美しく、魅力的な一冊です。
著者:村田良平
写真:マツダナオキ
発行:灯光舎
サイズ:178mm x 214mm
その他:164P / ソフトカバー