ホースから最初はぬるい水が出る、まだ残ってた涙みたいに
よく見れば夏ってどこもアスファルト 記念に一枚撮っておくかな
ぬいぐるみのみっしり詰まっている窓の見たことのある、でも違う愛
なんてことない坂道を下りつつ信じたことを手放していく
映画館の映画はどれも暗やみのできごと それになれないでいる
(収録歌より)
歌人・岡野大嗣さんが生まれ育った大阪の街を、写真家・佐内正史さんと巡った夏の記憶。
2年をかけて編まれた短歌102首と写真42枚が、一冊に収められています。
短歌が写真に、写真が短歌になる瞬間。
たった一瞬を切りとること。何気ないものに、きらりと息を吹き込むこと。
写し取られたものの向こう側、言葉の奥にある余白が、
いつかの通り過ぎた記憶と重なり、交わって、響き合う。
一本の映画を観終えたあとのような、心地よくも切ない余韻が残る一冊です。(嶋本)
著者:岡野大嗣・佐内正史
出版社:ナナロク社
サイズ:B6変形
その他:156p / コデックス装