2002年創刊、暮らしとモノを重点におきながらそこにまつわるストーリーを独自の思想とスタイルでもって紹介し、雑誌文化の景色そのものを変えた『クウネル』。本書は、もはや伝説的ともなったそのクウネルへの想いと思い出を中心に、文筆家の木村衣有子さんが自身の経験と当時の価値観などもからめながら綴る20数篇のエッセイがおさめられています。「「ていねいな暮らし」考」「無名の女、年嵩の女」「ジェンダー、クローゼット」など、クウネルから当時受け取ったものを今の観点から眺めるひとつひとつの文章が興味深い。一冊の雑誌を軸として時代や文化を俯瞰すると同時に、著者自身のある種の個人史ともなっているユニークな文章がつらなります。創刊号から7号までを詳細に論じたページも独特の読み応え。クウネルに触れた人もそうでない人も。人と雑誌について考える木村さんらしいエッセンスが詰まったこの一冊をどうぞ楽しみください。ペーパーバックの軽やかな造本も魅力です。なお、冒頭にはむかし木村さんが当店で働いていた頃の思い出話も綴られており、その点は我々だけの特別な感慨となっております。

著者：木村衣有子
発行：BOOKNERD
サイズ：115mm x 188mm
その他：160P / ソフトカバー