日本の伝統工芸であり、修復の技術である”金継ぎ”
経年劣化によるものであったり、ふいの事故であったり欠けたり、壊れてしまったり…。器などの傷やほころびを、隠すことなく継いで直す、ヒビや割れの境目がものの一部となることが特徴の修復技術。本書はそうした”金継ぎ”にインスピレーションをうけた静かな物語。
お茶会をたのしむうさぎと小鳥、そのテーブルのうえはカラフルで賑やかで、まるでさまざまな話題が飛び交っているよう。ですが、小鳥は色をなくしていき、カップはひび割れ、そうして小鳥は去ってしまいます。うさぎの心はもがき、漂い、沈み…。その只中で通りすぎる世界のいろいろなもの。そしていつしかうさぎは、テーブルのあったところに帰りつきます。
椅子に座ってみて、その先の空席を見つめる心はきっと、小鳥を想像しているのでしょう。そうして…
最後のページ添えられたエミリー・ディキンソンの詩が、ほんの少しの一歩を踏み出す力、希望の心を讃えるよう。
日本にルーツをもつイッサ・ワタナベの、心象描いた美しいイラストと、柴田元幸さんのエミリー・ディキンソンの詩訳が相まった素晴らしい絵本です。大人の方にもおすすめです。(原口)
著者:イッサ・ワタナベ
詩:エミリー・ディキンソン
詩訳:柴田元幸
発行:世界文化社
サイズ:230mm ×230mm
その他:48p / 上製本