「あの夏の旅行記が始まりだった。旅は、私の一番古い記憶であり、今は言葉を綴る原動力となっている。」（「旅のはじまり」より）

『たべるたのしみ』や『朝おやつ』に次ぐ、文筆家・甲斐みのりさんの随筆集。
映画『なまいきシャルロット』と『アメリ』に出会い憧れ続けたパリへの初旅行。「お茶っこ」でもてなしてくれる東北のこけし職人さん。小学生の頃愛知県のおみやげ店で見つけた七宝焼のブローチ。「なにもしないこと。」という贅沢をたのしむクラシックホテル巡り。それから旅の日の朝、車の中で食べる母お手製のお弁当や、揚げたてにあっさり味のソースをたっぷりかけて頬張る黒はんぺんフライの、ほんとうに美味しそうなこと。幼い頃興味の赴くままに書き記した旅行記を原点とした、著者の旅の記憶とそのよろこびを丁寧に綴った33の旅物語。
装画は今作も画家・湯浅景子さんによる描き下ろしです。（藤林）