昭和を代表する私小説作家、上林暁。本書は夏葉社から刊行する二冊目の傑作小説集。
選者は京都・銀閣寺の近くで古本屋を営む山本善行さん。上林暁の書籍を編むのは本書で4冊目。ベストテンを並べるような編み方ではなく、心の片鱗に姿をみせる小説に、しぜんと集まったで作品で構成したという、文脈に精通した選定と美学の詰まったもの。今回は上林の小説の中では珍らしい童話作品ともいえる「手風琴は古びた」という作品を核に編まれたそうです。装画は絵本作家としての顔もある画家・阿部海太さんが担当。筆致を生かした色の表情がうつくしく、「手風琴は古びた」に添えられた挿絵もカラーでお楽しみいただけます。また造本も大変凝っており、本へのこだわり感じる落ち着いた佇まいの1冊です。贈りものへもおすすめです。(原口)
■収録作品
天草土産
淋しき足跡
海山
夭折
トンネルの娘
冬営
清福
景色
ニ閑人交遊図
孤独先生
手風琴は古びた
撰者あとがき