ちいさなトガリネズミは古いアパートに一人暮らし。きっちりと起き、ご飯を食べ、お弁当を持って仕事(空港の両替所!)に出かけ、決まった時間に帰ります。そんな彼のある一日、休日の出来事、そして友人の来訪という3つのお話が一冊につまった楽しい絵童話。作者のみやこしあきこさん独特の、動物たちと人間が融和する暮らしが描かれた愛らしいファンタジー。室内のインテリアや街角など、どこか外国の暮らしを思わせる風景もおなじみで、眺めているだけで旅をしているような、その場所で暮らしているかのような気持ちになるから不思議です。オイルヒーターや黒電話、ブラウン管のテレビ、古いラジオ、上げ下げ窓…。お話とともに、目を凝らして細部を見るのも楽しいもの。鉛筆で描かれた淡くにじむような色彩とクリアな線の融合も美しい。このトガリネズミくんはこれまでのみやこしさんの作品でもたびたび目にしてきましたが、ついに一冊の作品になって登場です。小さな子にも大人にも。(能邨)