ああ、恐ろしや・・・。
奇妙な形、怪しい雰囲気。この世のキワにいるかもしれない不思議な生きもの。
好奇心を惹きつけてやまない世界の霊獣・幻獣・怪獣が豊富な資料と共に1冊に。
第1部では「水」「天」「地」に整理され、大衆芸術に生きる比較的ポピュラーな存在から、限定的な文化に生きる古今東西の幻獣たちがビジュアル豊富に掲載。
人魚ひとつとっても、両足がナマズ、顔は人面など、精霊なのか女神に位置するのか、世界を探すと実に様々な形態を見せます。造形や色彩の妙もさることながら、薬であったり、信仰や象徴であったりとその深層や文化の解説は読み応え抜群。
しかし、人類はなぜそれらを思い描き、形にしてきたのか?
第2部では「見る」「知る」「創る」にフォーカス。近代では博物誌からは消えゆく一方の、この世のどこかにいるかもしれない珍しいものたちの貴重な資料。過去の書物や地図、歴史背景と共にめぐります。最後のセクション「創る」では、アート・マンガ・ゲームの世界に生きる現代の幻獣表象に注目し、クリエイターたちの創る過程を紹介。
世界の民族文化・文化人類学を研究・展示する機関である国立民俗学博物館発行の資料価値の高い1冊。
「ありえない」生物、現象を伴ったキワに位置する者たち。その造形の意図も存在する条件も土地に実にさまざま。しかし抽象的なイメージの部分こそ醍醐味、解説と共に生き生きとした驚異的で怪異な世界をお楽しみくださいませ。
(原口)