古い雑誌から切り抜いた鳥や蝶、バレリーナ、ガラス玉や木のボール、ワイングラス、素焼きのパイプ、コルク片…。それらを手作りの木箱に精妙に配置し、小さな空間にさまざまな詩的宇宙を封じ込めた「箱」の芸術家、ジョゼフ・コーネル（1903–1972）。本書は、2010年にジャーナリストで美術評論家のデボラ・ソロモンがコーネルの人となりと作品を丹念に調べ上げ、魅力的に語った評伝『UTOPIA PARKWAY: The Life and Work of Joseph Cornell』の全訳『箱の中のユートピア』を、没後50年を迎える12年ぶりに装いも新たに再刊行したものです。装丁は旧版と同様、三木俊一が手掛け、コーネルの作品そのもののような佇まいを持つ造本が、見る者の心を奪います。新版では、作品図版の代わりに訳出された原注が収められ、20世紀アメリカが生んだ稀有な芸術家の全貌に迫る貴重な一冊となっています。