日本を代表する私小説作家の一人、上林暁の随筆集が刊行されました。
芥川龍之介が普段から「辞書を読む」ということを知り、作家になるには学識がなければと奮起する若き日の上林。菊富士ホテルの近くに下宿していた学生時代から、文壇でも酒飲みとして知られた上林の酒にまつわる話、
筑摩書房創設者・古田晃や太宰治、尾崎一雄、井伏鱒二など時代を駆け抜けた編集者や学者・文士たちとの交流。古本屋や古書市で大正期の文士の初版本を見つけ、歓喜する姿は本好きの皆さんも共感するところだと思います。
これらの文章はそれぞれ「文」、「本」、「旅」、「酒」、「人」というテーマに分けられ、渋味のあるバラエティに富んだ内容になっています。
『星を撒いた街 上林暁傑作小説集』、『故郷の本箱 上林暁傑作随筆集』(ともに夏葉社)に続き、三回目の編集となった山本善行さん、作家の作品を愛し、その素晴らしさを伝えてきた彼の編者解説も必読です。