世界的にも台湾を代表する映画監督として知られる侯孝賢(ホウ・シャオシェン、Hou, Hsiao-Hsien)。こちらの本は、侯孝賢が2007年に香港バプテスト大学で行った講義の記録です。
80年代に台湾で起こった社会性、芸術性を追究する映画製作の新潮流「台湾ニューシネマ」を牽引した代表的な監督として、自身の生い立ちや社会的な影響を踏まえ、ワンシーン、ワンショットを貫く美学と信念、具体的な撮影技法や生まれた工夫、役者との交流を丁寧に綴った1冊です。
戦争映画、また戦争を描くことに対しては、集団を描く難しさを語り、むしろ個人や当事者である人間を描くことで、人物を大抑したり、英雄化せずに描くことの重要性を語っています。
また、後半の学生からのシンプルで気骨のある質問に対する侯孝賢監督の応えには厳しさと愛情があり、映画の道を歩む若者へ惜しみないエールを送ります。
表紙の侯孝賢監督、とっても素敵です。(原口)