"ぼく"が引っ越そうと思い部屋を探していると、通りかかった周旋屋(不動産屋)の張り紙の中に、とりわけ安い物件を見つけます。
-サン・ハイツ-「六じょうと 台所 おふろ といれっと」
条件の中には、「みんなのしあわせのために まいにちおさかなをたべて 頭やしっぽをすてる方。」なんて事が書いてあるし、駅からはだいぶ遠いけれど…何といってもとっても安い!
ぼくはあわてて周旋屋に飛び込みます。契約を済ませ、早速向かったサン・ハイツですが、それはアパートではなく、なんとぼろぼろの一軒家でした。
さらに驚くことには、サン・ハイツのおおやさんは49匹のねこだったのです。それからぼくは、すし屋の飼いネコになりたい猫の履歴書作りを手伝ったり、アゲハチョウに恋をするとらねこを優しく見守ったり…。おおやさん達とのお付き合いが、生き生きと描かれ、小さな友人達への愛情深いまなざしと、端々に本質をついた名作です。
この物語は、三木卓さんが仕事部屋に借りていた部屋をモチーフに書かれた物語です。アパートのコンクリートのたたきには、実際にネコの梅の花の足跡がいくつもついていたそうで、いつも飼い猫ノラ猫合わせて二十匹ほどがゴロニャンとしている、猫好きな三木さんにとってはとてもうれしくて刺激的な環境だったようです。(原口)