17〜18世紀に活躍した、昆虫・植物の細密画家であり自然科学の徒でもあるマリア・ジビーラ・メーリアンの代表作「スリナム昆虫変態図譜」より抜粋されたペーパーバック。蝶類が幼虫から変態によって見事な成虫に変わるその過程を好奇心と情熱で持ってスケッチし続けたマリアの業績はその後の昆虫学にも大きな影響を与えたと言われています。本書は、そういった学術的な意義のみならず精密な博物画の持つ厳かな美と特有のエレガントさに満ちているのも大いなる魅力。研究観察への熱い眼差しがその余白からも伝わるようです。抄本となるこちらはハンディな判型も手伝って気軽に紐解けるのが嬉しい。自然科学のスケッチ画集の素晴らしさの一端に触れられる一冊です。黒を貴重としたブックデザインもペーパーバックながら秀逸。表紙の端のわずかなめくれなどはありますが、概ね古書として標準的な状態です。元版は60年代となり、本書の明確な発行年は不明ですが70年代後半以降と思われます。