下着デザイナー・鴨居羊子が綴る幼い日々の記憶。新聞記者だった父の転勤にあわせて住んだ金沢での思い出、京城での暮らし。それらをひとつひとつ紐解きながらゆっくりと語る様は、昭和の一時期の一家庭の貴重なスケッチともなっています。「未完の年齢が好きだった」という大人になりたくなかった一人の少女の見たその頃の世界。鴨居羊子独特の文体も魅力であり、追憶の書という分野に惹かれる人にもぜひ手にとって欲しい。合間に挟まれる著者による絵も遠い日を思い起こす味わいを醸し出しています。特に目立つ難はなく古書として比較的きれいな状態です。