アムステルダムの写真家 Hans Bol による写真集。写真家がライフワークのように撮影し続け、数冊の写真集として発表してきたカラスのイメージ。本作においてそれらの合間に挟まれるのは、2011年に癌の宣告を受けた写真家の実父が眠る姿。息を引き取るまでの半年の間に高精度のカメラにより撮影されたその身体と、タイトルにおいて実際とは反転する色で名付けられたカラスのイメージの反復。死という不可避の時へと進みゆく愛する人への個人的な追悼であると同時に、変容や永遠という普遍的なテーマをシンボリックなかたちで表現し、しんとした静けさが"聴こえて"くるような一冊。シルバーのインクを用いたカバーや袋とじ製本など、写真家自身による隅々に行き渡った意匠も美しい。