“つねに動いている里山は、わたしたち生物の騒がしい応酬の迫間に生まれつづける。だから、間違っても歪さを制止してはならない。むしろ、多くの種が入り乱れる喧騒を囃し立て、拍車をかけるべきである。ヒトにはそれができるはずだ。” ― 「巻頭宣言」 奈良、大宇陀の里山。 2015年より移住し、鶏と暮らし、稲作などの農業や林業を生業とする、若き農耕民・東千茅さん。里山や農業に対する清廉で禁欲的な幻想を真っ向から否定し、自然に向き合う独自の感性を表現した、初の単著『人類堆肥化計画』は、鮮烈な論でした。東さんらが制作する雑誌「つち式」、三年ぶりの刊行です。 里山での活動を記録し、「より生きる」とは何なのか、実践の渦中で考える。鶏、カヤネズミ、アカハライモリ、タゴカエル、薊や蛇。里山に蠢く、種種の生物たちに目をやりながら、観察と思考は混濁していく。草刈りという「作業」から自然の遷移を想像したり、紛うことない実践者でありながら、どこか距離を感じさせる東さんの感性。「カラフルで物騒でかっこよくてユーモアと悪ふざけたっぷりのものに仕上がったと思います。」という一言の通り、サイケなデザインにも注目の一冊。向こう二百年の里山計画を見越して、表紙には「一/二〇〇」と書かれています。二百年のうち、最初の一年がはじまる。年に一度の刊行が、楽しみな媒体です。
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