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作家の言葉
本書の制作にかかわっていると、ぼくは三十数年前につくった装丁術(*)のことを思いだした。あのときもワイワイみんなで作っていた。たしかぼくは40代で仕事場には猫がちょろちょろ出入りするし、庭で幼い娘が泣き叫んだりしていた。できあがった『平野甲賀と』はなんだかあの本の続き、あの本への30年後の返信みたいだ。-*1986年晶文社刊、日常術シリーズ『平野甲賀〔装丁〕術・好きな本のかたち』
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幾多の名著の装丁と〈描き文字〉を手がけてきた、装丁家・平野甲賀さん。往年、晶文社から刊行された本を筆頭に、独特の描き文字を誰もが一度は目にし、ご自宅の本棚にも甲賀さんがデザインした本が差さっているはずです。
平野甲賀「〈描き文字〉画文集」の決定版的一冊が刊行されます。新作の描き文字作品のほか、近年移り住んだ四国高松で取り組む寺子屋「マルテの学校」の活動のこと(編集部記)、仕事場での幕間のひとこま(撮影=平野太呂)、さらには大好きなイラストレーターや自身がこれまで影響を受けてきた古今の描き文字”画家”について綴ったエッセイを収録。甲賀流・描き文字ワールドの現在をつめこみます。
平野甲賀の門をノックした若きデザイナーたちによる工房「horo books」が、描き文字や掲載作品の選定から、レイアウトや造本までを担当。甲賀さんがこれまで築きあげてきた世界と、若い芽がチームになって生み出された渾身の一冊です。